DX(デジタルトランスフォーメーション)の活用と経営ビジョン

 よさ来いワイナリーが目指すビジョンの一つに、「高知県内にワイン文化を生みだし、そして根付かせること」があります。これには、半永続的にこのワイン事業、また県内のワイン事業が続くことが必要となってきます。
 その反面、今後、少子高齢化等で人的リソースの減少ならびに事業継承などが難しくなることは明白であり、DXを利用してこれらに対応することを弊社は目指しています。

 ワインという事業は、農業であり、製造業です。農業も製造業も、これまでヒト(労働力)から機械・ロボットという機械化が行われてきた産業です。畑を耕すのはトラクターに、ぶどうの破砕は足踏みからプレス機械に置き換わってきました。
 ただこれまでの機械化はあくまで人力を機械にしてきたことが主体で、プロの五感や頭脳の代わりをするものは実用化されていません。

 ぶどうの栽培をはじめとする農業は、気温・農薬・肥料・土壌・栽培方法・樹齢・昨年の発育/実り・天候等多くの要因がその結果に関わる、いわゆる複雑系であり、温度湿度といった指標一つでその将来を測ることはできません。
 またワイン醸造は製造業の一部とされていますが、酵母という微生物がワインを生み出すため、人間はその発酵しやすい環境、汚染が進まないような環境等を提供するだけで、ぶどうの種類、温度・収穫時期・ぶどうの酸度/糖度・酵母の種類・清澄化の程度等の情報から、その味・香りをといったアウトプットを計算することが難しい業種です。

 上記の視点から、全ての農業や醸造に当てはまるようなソフトウェアやDX化は困難であるが、個別に各農家・醸造家が考えていることや経験したことをデータ化してAI等に覚えさせることは可能です。
 そのためには、各農家・醸造家に応じたデータを集積し、仕事のスタイルや進め方ごと個別にAI/IoTをカスタマイズで作成、アップデートしていくことが必要となります。ただし、これを継続的にアップデートしていくためには、その農家・醸造家がしっかりとITに興味を持ち、理解し、そして改善していく必要があります。
 そのため、これらのDX化を弊社が実現した際、他の事業者が後発で取り組んだとしても、すぐには実用化・ナレッジ形成することはできず、これが弊社の強みとなると想定されます。

 よさ来いワイナリーは代表の窪内がIT業界出身で、これまでにAI/IoTの仕事にも携わってきました。その長所を生かし、よさ来いワイナリーはワイン事業のDX化を目指します。これまでに前例のない取組のため、トライ&エラーをしながらDX化を進めていく必要があり、毎年アップデートを繰り返してまいります。
 具体的には、IoT等によるデータ化とそれによるAI等を活用した収量・成長予測モデル、および醸造の発酵プロセスの見える化とその分析予想のモデルを開発し、クラウドで共有を図ります。

作業プロセス概念図

 またこれらのモデルは、他社や新規参入のワイナリーでの有効活用も可能です。よさ来いワイナリーが主となるアカデミーの設立やコンサルタント事業も可能となり、新たな事業展開も可能となります。

 これらを踏まえ、中長期(5年)の経営ビジョンとして、以下の3つを示す。

  1. 毎年1万本を超すワインを製造・完売し、高知を代表するワイン製造会社となる
  2. DX(AI/IoT等)を活用した業務効率化、作業平準化を実施し、従業員が健康とやりがいを持てる会社となる
  3. DXを用いた新たなワインビジネスを創出し、高知にてワイン事業に関わる人を増やし続ける